この本では行動経済学について書かれています。 行動経済学から人間の意思決定プロセスと感情の影響を学ぶことができ、 ビジネスリーダーとマネージャーはチームのモチベーション向上に、マーケティング専門家は消費者行動の深い理解に、心理学に興味がある人は日常の意思決定の探求に、自己改善を目指す人は行動の理解と改善に、教育者とトレーナーは学習者のエンゲージメント向上に役立つ知識を得られます。
人間は非合理的
行動経済学は、経済学と心理学の融合により、人間の非合理な意思決定を解析する学問です。
アダム・スミスの経済理論に対し、現実の市場経済は完全に合理的ではないと指摘します。
この学問は、非合理性を「イナーシャ(慣性)」「損失回避」「現在志向バイアス」などの心理的バイアスを通じて説明し、「認知のクセ」「状況」「感情」という要因で分析を行い、非合理な判断をしてしまうのはなぜか説明することができます。
システム1とシステム2の考え方
ダニエル・カーネマンによると、人間の情報処理には「システム1(ファスト)」と「システム2(スロー)」があります。
システム1は、日常で使用され、直感的な判断や習慣的行動に使われます。
一方、システム2は、慎重で時間をかける思考プロセスなどで用いられ、難しい問題を解決する時や大切な決定を下す際に使われます。
システム2は負荷が強く、疲労や情報過多の状況では、システム1が優先されることが多いです。
時間帯によって判断が異なる
「時間帯」は意思決定に大影響を与えます。朝、健康的な食事を計画しても、夕方の疲れでファストフードを選んだ経験はないでしょうか?
カーネギーメロン大学のジョージ・ローウェンシュタインが言う「感情移入ギャップ」は、疲れた状態での意思決定のズレを起こします。
このギャップを克服するには状況を工夫することが重要で、例えば、夜にジムに行く習慣を作ることで、疲れた時の健康への意志を支えることができます。
双曲割引モデルとは
人は近い将来には時間の差に敏感だが、遠い将来ではそれを軽視する非合理的な傾向があります。
例えば、今すぐの100ドルもらうのと1ヶ月後の120ドルを比較すると、多くの人は今の100ドルを選びます。
しかし、1年後の100ドルもらうのと1年1ヶ月後の120ドルの選択では、遠い将来のため120ドルを選ぶ傾向があります。
ビジネスにおいても長期的な利益より短期的な利得に焦点を当てる行動をしてしまいます。
淡い感情が人の行動に影響する
行動経済学では、目立たない「淡い感情」も重要です。
これら「アフェクト」と呼ばれる感情は、ポジティブとネガティブどちらも含みます。
ポジティブなアフェクトは幸福感を高め、ネガティブなアフェクトは心身の不調に繋がります。
ネガティブな感情を「認知的再評価」でポジティブに捉え直すことが大事で、コーヒーを飲んで落ち着いたり、「ワクワクしている」という自己暗示で前向きな感情を生み出すことが効果的です。